『手紙』



拝啓「うずまきナルト」様
お元気ですか。
俺が街を出てもう三年が経ちました。早いもんだなと思います。
皆元気にやっていますか?
今でも毎日馬鹿やって笑っていますか?
笑っててくれるといいと思う。
…敬語はダメだな。やっぱり。
最後くらい丁寧にしてやろうと思ったが、無理だった。
とにかくお前には感謝してる。
言いたいのはそれだけだ。


もし俺のことをまだ覚えていたら
早く忘れちまえよ。



 名前のない手紙の送り主なんてすぐにわかったけど、俺は知らない振りをした。
 それを俺に届けたのは郵便屋でもなく、ましてや伝書鳩なんてもんでもなく、日曜の昼間にやっている陳腐な二時間ドラマに出てくるような厳つい顔のおっさんで。やっぱりその職業は刑事だって。
 そんなおっさんが持ってきたのは案の定、手紙だけなんてことはなくて、三年前にこの街を出て行った俺の友人の卦方だった。
 散々殴られて、いたぶられて、結局最後は溺死だって。ダッセェの。水吸って膨らんできっと色男が台無しだったんだろうな。プライドの高いお前の割にはお粗末な死に方じゃねえかよ、なぁ、サスケ。

 若くしてこの街を出たアイツがやっぱり若いままこの街に帰ってきた。随分小さくなっちまってたけど。
そんなアイツのために集まったほんの少しの知り合いの中に血縁のやつなんていなかったから、誰も咎めることのないまま俺の家につれて帰った。誰も何も言わなかった。

「…なぁ、」

 畳の上に置いた小さな壷と向かい合って語りかける。そこには聞いてくれるアイツがいるわけじゃなかったけど、まるで生きていた頃のアイツが目の前にいるみたいに俺は話し続けた。

「俺があの時お前に応えてたら、何か違ったか…?」

 街を出るあの日、俺に告白したお前に答えてたら。
 最後に冗談だっていつもの胸糞悪い笑顔で笑ったお前を、行かないでくれって抱きしめていたら。

「忘れていいなんて、思ってないくせによ…」

 その日、俺は飯も食わないで風呂にも入らないで小さくなってしまったサスケを抱きしめて泣いた。
 アイツと同じように愛していたわけでもそれに答えてやれるわけでもなかったけど、それでも涙は止まってくれなかった。